
ピストンの開発から初試乗にこぎつけたものの、エンジンからのノッキング音に少々暗雲が立ち込める
ノッキングは正常な燃焼による火炎が到達する前に,末端の燃料,空気混合気が自発発火することによって起こり,急激な燃焼による大きな圧力変動のために金属性の打撃音が発生する(ハンマーで叩いたような金属音)
レース用の遅燃ガソリンで緩和されると言うことはもう少し圧縮を抜くか、点火時期を遅らせるようにいたずらできないか考えてみた。
後者は完璧にメーカーの作りだしたECUのブラックボックスを解読しなければならないためにハングアウトの設備や知識ではどうも太刀打ちが出来ない、なら前者の圧縮を抜く方向で考えなければならない。
再度ピストンの設計の確認になる。ピストンヘッドの肉厚の確保である。ハングアウトピストンは鍛造成型が為におおかたの寸法は決まってしまっている。鍛造が故の専用部品が加工の幅を狭めてしまった(汗)専用ピストンの型を作ればいいのですがこれではまたまた大きな投資をしなければならず現実味が無くなる。もったいないけど試作で作られたピストンを割ってみて実際の寸法を計測。圧縮を下げると言うことは”これ面白いかも”と思った領域から外れていくということで、ここからが仕上げの微調整にもなってくる。
紙切れ1枚薄くする!硬い鍛造素材を少しずつ、少しずつ削っては組みつけ、削っては組みつけの繰り返し…
そしてやっと…普通に使う分にはノッキングはでない所までやってきた!が…テストするライダーは普通には走らない!どうしてもラフな使い方をして、エンジンの使用状況を酷使するように乗って"気に入らない!”と一言…(汗
私個人的にはそん領域を外せば楽しいし面白いし…でもラフに開けた時のノッキング音はどうしても心臓に悪いのでやはり普通い製品化するには難しい、そこで最後の手段!!ベースガスケット2枚入れ!!
普通に走行したいそんなかたの為の安心して乗れる領域!
いや自分はうまく操作するからとげがあっても良いよとする領域!
これを数百円のパーツを入れる入れないで選ぶことが出来るならありかもしれない.
まあ後者を選ぶのは明らかにレースで上位を狙う連中だと思う。
テスト走行段階で普通に使っていてノッキングなるものが出ることが極めてないことに気が付いた。
出そうと思えば2枚入れのガスケットでも出すことはできる!この部分は意地悪な方が(私を思っての意地悪走行ですが)わざとノッキングが出るように走行するとやはり出るよ~と
どんなシチュエーションでおきるのかを検証するも、普通に使っていたらなかなか遭遇しない!交通事故に合うくらいのまれな状況下でのノッキング現象ではなかろうか!?
逆にいえば…交通事故は自分がどんなに気を使っていても相手の不注意で巻き込まれてしまうことも多々あります。相手の不注意とあっても事故は事故、回避できなかったら意味がありません。
ですがノッキングはどの様なシチュエーションであってもアクセルをひねるライダーが少しでも気を配れば100%に限りなく近く回避できるもの、その前に嫌な感じのものなので人は自然と回避する操作をするので逆にどうやったら出るんだろうと不思議なくらい遭遇できないのも今回のエンジン仕様の不思議な所でのマッチング
その不思議なマッチングは他の部分にも絶妙なマッチングをもたらしてくれた!
駆動系の伝達です。歯切れのいいレスポンスをするエンジン仕様ではどうしてもクラッチが追従しなくなってしまう。
常に滑っているわけではないがおいしい所で残念な気持ちにさせられる。クラッチの滑りを回避する方法は考えてあるので試してみるが、通常走行の多い時はそれが逆にデメリットになってしまい運転がおっくうになってしう。それではせっかくの楽しいエンジン特性が面白みがうせてしまう。ところがガスケット2枚入れのボアアップキット内容で行くと…
普通に強化されているクラッチでも通常走行に支障が無い、おいしい所も失われない、絶妙なマッチングである。
過激なエンジン特性から扱える楽しげなエンジン特性で明らかにノーマルとの違いが体感できて、普通に乗れてしまう、気を使うところが極めて少ない美味しいエンジン特性が見えてきた瞬間でした。
メーカーで色々なテストを経て完成されたバランスのとれた車体とエンジンを崩すのだから、やはりバランスは崩れていくだろうけど、メーカーではやれない、作れない部分を補えれば、これはこれで一部のユーザーの満足度を補えるであろうと。メーカーは全ての人に対応するためにを前提に生産コストと技術と知識を使って車両を完成させていく、反して一部のユーザーを狙って知恵と経験で車両を煮詰めていくのがハングアウト?
押し強いところが定まってきたところで最終段階移行です!
ミニバイクにおいて一番過酷なレースでのテスト走行!!
空冷シングル、真夏の猛暑、長時間の連続走行、過激なコースレイアウト、10%のきつい上り坂
そうです、真夏の菅生サーキット ミニバイク6時間耐久レース参戦です。
今回はレース用のマシン作りではなく、普段使っている姿(決して特別なことはしない)
誰が見ても、何処から見ても"スーパーカブ”とわかる姿で、エンジンも市販設定された状態で特別なことは何もしない
普段お願いしているテストライダーでもできない過酷な条件でのテスト走行!!
…過去に縦型エンジン何基壊したことか(涙
それでも壊した経験分、今ではレース中に壊れることが無い安定したエンジンでレースに参加して常に表彰台附近に居ることが出来るのは全て、”グッシャ”と壊したエンジンの改良からなるもので絶対につながる経験値を手に入れるための参加でした。
くそ暑いなか、常いリミッター付近を使って、コーナリングの度にシフトダウン&シフトアップ、10%の昇り勾配を全開で抜けていく、それを6時間もです。休憩は燃料補給とダメージを受けた人間の交替の為のピットイン!!
人間は1時間半走行後同じ時間だけ休憩し冷たい飲み物で身体を冷やし、身体を休息するけど…
スーパーカブ号は燃料補給したらそのまま全開でコースに復帰!!
エンジンが止まっているのも1分あるかな?(レース用のクイックチャージャーで燃料補給するから4L落とすのに1秒弱)
ピットロード制限速度60Km?(40Km?)でのクールダウンと燃料補給のためのエンジン停止以外は6時間常に全開!!
普段使っていると明らかにこれ以上のシチュエーションは作れないだろうと…
逆にいえばここまで酷使したら何処が壊れていくのか…
そして結果は…レース終了まで何も起きない、しかもレース終盤でのベストラップ更新は最後の最後までエンジンの調子は変わらなかった証明になる、そして一番驚いたのは…レースをしてない人はあまり知られていないことですが、レースが終わると正式結果が出るまでコース上にマシンが放置されて、誰も車両に触ることが許されない、チェッカーを受けたあと一周のウイニングランでクールダウンできるけど…エンジン停止後は誰も触れないんです!6時間過酷に使われてきたスーパーカブ号ですが、車両保管解除後…何事もなかったかのようにセルでエンジンをかけて自分ちのピットにもどってきた時、普段のレース終了後と違う感触を得られたのも事実です。エンジンから変な音がしない、変なにおいもしない!これはレースを戦ってきた車両にとってはとてもすごいことで感動以外の何物でもありません。
何事もなかったようなスーパーカブ号はそのまま自走で宮城から埼玉に帰れそうな雰囲気まで漂わせています。
レース結果は43位/83台中と大健闘!!
そして、埼玉に戻ったスーパーカブ号はエンジンを降ろしてレース終了後のリフレッシュを…
しようと思ったのですが、ピストンの当たり、エンジンヘッドの状態共に何も感じられず、そのまま蓋をして普段の通勤バイクに戻してしまいました。(オイル交換だけ~)
実際にレースに使用して、これだけのポテンシャルとエンジンの耐久性を証明できたことは非常にうれしいことで自信を持って製品化できると確信したのは紛れもない事実です。
自分の中でもやっと”合格”のハンコがもらえた心境でやってきてよかった~と心底思える出来事でした。